地球が終わらなかった夜

世紀末星は降らず

うつくしいひと

 きれいな人だな。はじめて目にした時に、胸に浮かんできた言葉はそれだった。モデルさんかな、と思った。なにかを諦めたみたいな、でもまだ大きな相手に噛み付く意思を残しているような、黒目の底の見えるまなざしが印象的で、心に焼きついた。

 それから10日ほど経って、きれいな人がモデルさんでは無く、ダンスを生業にしていることを知った。すずきたかひでさんというお名前だった。たかひでさんは、16人のメンバーで構成されたボーイズグループに所属していた。MVを見てみたら、全体の尺の16分の1も映らなくてちょっとびっくりした。それでも、瞬間瞬間に覗く、あの鋭い眼差しが気になって、何度もMVを見た。

 MVだけでは足りなくなって、舞台に行った。ライブに行った。生で見て初めて、この人はなんてダンスが上手いんだろうと思った。決して派手ではないけれど、しなやかで丁寧で、ひとつひとつの言葉や音符を全身で慈しんでいるような、歌詞を身体に乗せて表現するような、そんなパフォーマンスを、好きだなと思った。
 そして、その丁寧さの陰には時折牙を剥く獰猛さがあった。私はその牙に、なぜだかひどく惹きつけられた。たかひでさんのダンスは私に痛みを与える。見ていると、不意に、心の柔いところを深く突き刺されたような気持ちになる。でも、不思議と不快ではなかった。多分、彼のパフォーマンスに、私を、受け手を刺すと同時に彼自身の心臓をも貫くような、そんな内罰的な色が乗っているように見えたからだと思う。この人の、この隠し持ったナイフはなんなんだろう。なんで私はそこに惹かれるんだろう。それが知りたくて、解き明かしたくてライブ会場に足を運んでいた。

 そうしているうちに、はじめは「半クラスは流石に多いって」と思っていた他のメンバーのことも好きになった。グループの届ける曲も、パフォーマンスも、何かに向き合うときの真摯さも好きになった。らんぺいじさんの真摯さは、私に勇気をくれた。

 ここ数年、いろんなことがあって私は画面の向こうや遠いステージの上の他者の人格を信じることに、勝手に信じて勝手に傷つくことに疲れていた。だからたかひでさんのことも、信じないように、傷つかないように、善き人であるという期待を寄せないように細心の注意を払ってきた。
それでも、柔らかな言葉選びや純心そうな瞳の表情を、フラットにかわいいを楽しむところを、何度も信じたくなった。

信じて傷つくのが怖かったから、「推し」と呼ぶのを避け続けてきた。一度でも推しと呼んだら、心の中の大事なところを明け渡すことになる。もし何かあったときに取り返しがつかなくなる。そう思っていた。私は、一方的に眼差しを送るくせに、自分が傷つく覚悟のない卑怯者だった。

 らんぺいじは一週間前に新曲をリリースした。新曲についての指摘や批判は散々Xで語ってきたのでここには書かない。だが、非常に受け入れがたい歌詞だった。どうにか変えて欲しいと思って、SNSに批判の声を載せた。FCの目安箱に投書もした。らんぺいじさんなら変えてくれると思ったから。ファンの声に真摯に向き合ってくれると思ったから。
 だが、変わらなかった。何の答えにもならない「想い」を綴る声明文だけが出た。失望した。心の底から。
それから、批判の声を押し切ってテレビパフォーマンスも公開された。歌詞だけだった方がマシなくらい、特定の思想を、人を傷つける思想を体現したパフォーマンスだった。たかひでさんは、この曲でも瞳の中に黒い反抗の炎を燃やし、言葉のひとつひとつをつぶさに表現する私の大好きなダンスを披露していた。彼の意思がどこにあるのか、それは私には知り得ないことだけれど、ともかくやりきれなかった。苦しかった。

 あるメンバーは新曲のパフォーマンスを指して「これがらんぺいじです」と発信した。ライブMCや有料ブログ内でのファンを選別するような発言も目にした。私の好きならんぺいじは、彼らの真摯さは、どこにもなかった。
彼らの代表曲の中の「この声を枯らす届くまで」という一節が大好きだったけれど、私の声なんか届かなかったんだと、無常感に襲われた。その後、届いた上で無視された事に気がついて、もっと救いようがないなと笑った。

 だから「推し」なんて呼ばなかったんだ。たかひでさんを「推し」と呼ばなかった私は、心を開け渡さなかった私は、やっぱり正しかったんだ。そう思って、それでも私は悲しかった。

最初からずっと信じていないはずなのに、楽曲に対するコメントを求められた際、歌詞にも、振り付けにも演出にも触れなかったたかひでさんに、一分未満の短い動画にみっともなく縋った。縋らずにはいられなかった。彼のブログやインスタに、指摘の声を矮小化するような言葉がない事を確かめては安堵の息をついていた。
 その反面で、こんな事になってしまったのならばいっそ彼の言葉で降りたいと、そう願ってやまない自分もいた。傷つきたくなくてたかひでさんを好きだと、大事だと認めなかった卑怯者の私は、たかひでさんではなく、彼のパフォーマンスが好きなだけだと逃げ続けてきた私は、卑怯者のくせに傷ついて、登った覚えもないものから降りたくて泣いていた。この3日間はうまく眠れなかった。

 該当の楽曲は歌詞、及び振り付けの一部が修正されるらしい。失った信頼や一度ついた負のイメージ、傷ついたファンの心はもうどうやっても戻らないけれど、対応があったことは素直に良かったと思う。
何が変わるのか、何がそのまま残されるのか、作り手やメンバーとの乖離を改めて突きつけられそうで、恐ろしさもある。
 作詞家の思想も表に出た。それを見て、メンバー自身の言葉が欲しくてたまらなくなった。彼らの言葉が賛同できるものであっても無くてもどちらでも構わない。ただ、私に光を見せてくれたのがらんぺいじなら、私に終止符を打つのも、もう一度はじめようと思わせてくれるのもらんぺいじが良かった。多分、私は今夜もよく眠れないだろう。

  私が眠れなかろうが、悲しみにくれていようが、失望していようが、この長い一週間、たかひでさんは毎日ずっときれいだった。 
せめて私の心情に、その美しさが少しでも左右されればいくらか慰めになったのかもしれない。でも、こんなに心が弾まないのに、たかひでさんのかわいさが、分厚い透明なゴムの壁を挟んだように遠くにあって、かわいいと嬉しいが全く結びつかないのに、たかひでさんは初めて見たときと変わらず、きれいで、かわいくて、美しかった。私はその変わらないうつくしさが、どうしようもなく寂しい。

肯定と救いの舞台『PICK⭐︎3』

 

180cmオーバーの成人男性による小学6年生役……!?未知だ……

 ついでに言えば出演者4人という規模感の舞台も、舞台俳優を本業とされている方が不在の舞台も、川尻さんが脚本演出を担当される舞台も未知であった。(観ている舞台の幅が異常に狭いオタク)

出演者のブログや公演案内によると、とりあえず「コメディ」らしい、そして「担任の先生が亡くなる」らしい。………担任の先生が亡くなるのにコメディなの!?……未知だ………

 こんな具合に、未知の多さに期待と若干の不安や猜疑心を抱きつつシアターミクサへと向かったのだが、観劇中はダバダバに泣いていた。2コマ漫画かよ。
涙脆い自信はある方だ。開演前に劇場で流れる「帰りたいな 帰りたいな 君といたあの頃へ*1」というフレーズが繰り返される曲に、なんとも言えずノスタルジーが掻き立てられ、何も観ていないにも関わらず既に泣きたくなっていたくらいには涙腺が弱い。
が、それを差し引いても、『PICK☆3』は心の柔らかいところに、じんわりと沁み入る大変に良い舞台だったと感じた。
嘘偽りなくコメディ。だが、コメディだけでは終わらない。ドライで軽やかな筆致で、誰しもが味わったことのある苦さを描く脚本の奥行きと手腕が見事だった。
 笑いながら泣き、泣きながら笑い、最後はショコラ横山にただただ泣いた。観劇後しばらくは「PICK☆3、さいこう……」以外の言葉を発せぬ人間となった。PICK☆3は最高。

ということで以下、舞台『PICK☆3』の感想です。
※大体ポーちゃん及びショコラ横山氏の定点をしていたため、情報量に偏りがあります。
※現時点では配信映像や円盤などが販売されていないため、私のあやふやな記憶のみに準拠して書かれており、情報が不確かです。

 

あらすじ

 舞台の始まりは海青さん演じるアッチョの部屋。
フィギュアを購入したり筋トレをしたりと日常を過ごすアッチョの元へ、小学校の頃の同級生・タマちゃんとポーの2人が訪れる。
予期せぬ来訪者に驚くアッチョだが、更に彼を驚かせる出来事が。なんと2人が持ってきたのは6年生の時の担任の先生"タクセン"が亡くなったという報せだったのだ。
 葬儀に行きそびれたアッチョのためにも、タクセンに最後の別れを告げようと、3人は小学校へと向かう。
懐かしい校舎の中、思い出話に花を咲かせる3人。
しかし、楽しかったあの頃とは違い、大人になった彼らはそれぞれに上手くいかない現状を抱えていて──

 

否定されない世界

 3人の抱えている事情として、まずタマちゃんには上司と反りが合わないという悩みがある。大手企業に入ったものの、威圧的で話を聞いてくれない上司に疲弊していくタマちゃん。彼は持ち味である革新的なアイデアを封じ、言われたことだけを黙々とこなすようになる。
 ポーはアーティストになるという夢を叶え、事務所に所属するところまでは達成したが、事務所の売り方と自分のやりたい事が噛み合わない。心を殺して歌ったところで売れることもなく、鬱屈とした思いを抱えている。
そうして、タマちゃんとポーの2人は、否定されることを恐れ、自分を抑えて生きていくことを選んだ。
 対するアッチョは、大学の友人にアニメオタクであることやフィギュアで遊ぶ趣味を「気持ち悪い」と言われたことがきっかけで引きこもりになってしまう。
自分の趣味を否定されることに怯え「好きなものを好きと言っても否定されない」「半径200メートル」の世界に閉じこもった。
アッチョは自室で布団にくるまりながら「間違ってることは分かってるんだよ!」と叫ぶ。アッチョの作り上げた誰にも否定されないはずの世界は、他ならぬアッチョ自身が自分を否定してしまう世界でもあった。
そんな彼を見て、ポーとタマちゃんは「(世界が)狭すぎるよ!」「なんであんな狭い部屋に一人でいるんだよ!」と言う。だが、私には、アッチョの立っている場所はタマちゃんとポーの延長線上にあるように見えた。
タマちゃんもポーも、否定されることを恐れ、本音を隠して生きているが、誰にも否定されなくなったところで自分で自分を否定することがやめられない。そうした意味では、本質的にアッチョと同じだ。
好きなものを心のショーケースから出したい、というアッチョの言葉に、タマちゃんとポーが黙り込んでしまうのも、2人とも心のどこかではアッチョの思いに共感しているからではないだろうか。

 

ドラマチックでは無いという救い

 本作は「担任の先生の死」というなかなかにセンセーショナルな出来事が軸となった物語である。しかしながら、「死」という単語から想起されるようなドラマチックな出来事は起こらない。3人がタクセンを偲んで涙を流したり、「なんで死んじゃったんだよ!」と号哭するような場面はなく、基本的には「タクセン死んじゃったんだ〜……」くらいのゆるっとした空気に包まれている。その空気感の中、3人がゆるっと思い出話をし、時たま口論にはなるが、すぐに仲良くまとまり、また思い出話をする……といったやり取りが続いていく。
 こうした非ドラマチックとでも言うような要素は3人のキャラクター造形にも及ぶ。
小学生だった頃の彼らはいわゆる問題児である。授業?朝礼?には遅刻。給食を盗み、住居に侵入し、公園にゴミの山を作る。
彼らがこのような問題行動に走る理由だが、3人の家庭環境が複雑で満たされない思いを抱えており……とかではない。全くない。
単純に"楽しい"を突き詰めただけの行動であり、そこに誰かを困らせようだとか、何かを主張しようという意図は存在しない。
テンプレートな不良らしい言動も見られず、ちょっと思慮に欠けるだけ(それも小学生という年齢の範疇かなと思う)の、無邪気で素直で純真な子供たちなのだ。
 成長した彼らにも非ドラマチックは受け継がれる。
大人になった3人に共通して言えるのは、苦しさを抱えてはいるが、生活に困るほどではない、という点だ。
大手企業のタマちゃんはもちろん、アッチョも趣味に使うお金があったり、親から働くことを要求されている様子が見えないなど、金銭的に困窮してはいなさそうである。
ポーの暮らしぶりは作中では描かれていないのだが、マネージャーの「田舎に行けば人気になれますよ」という趣旨の言葉から、売れてはいないがまだアーティストとしてご飯を食べていける道があることが伺える。
要するに3人は切迫した大規模の不幸や悲劇の中を喘ぎながら生きる人間では無いのだ。だから観客の心に刺さる。
 何か大きな出来事があったわけではない。不満も本音も飲み込んで、上手くやり過ごせばそれなりに生きていける。生きていけるけれど、それでも少し息苦しい。これは多くの人が身に覚えのある感情ではないだろうか。
ドラマチックで劇的な事を描かず、ささやかな、ありふれた感情を描くからこそ、共感出来る。共感することで救われる、そういう舞台なのだと感じた。


肯定の物語

個人的に『PICK☆3』を鑑賞していて1番感じたメッセージは肯定である。

 アッチョの引きこもりの理由や、ショコラ横山の『ポメラニアン音頭』、『大根おろしディスコ』は恐らく8割9割ギャグとして設定されており、該当場面では舞台上の人間も客も笑う。だが、当事者以外から見ればギャグであってもアッチョとポーにとってはそうでは無い。
本作では傍から見たら「なんだそんなことか」と思えるような笑い事が、当人にとっては鮮明な痛みを伴った傷口であると描かれ、そう演じられている。
これに類似した描写は他の場面でも見られる。

タマちゃん「アッチョのお宝の価値って俺らにはよくわかんなくてさ」
ポー「いいと思うよ、アッチョのお宝の価値は、アッチョだけがわかればいいんだ」

傍から見れば大したことが無いとしても痛みを感じていい。反対に他人から見ればガラクタでも、自分にとって大切なら宝物でいいのだと、3人の姿を通して伝えてくれる。

 あの頃のタクセンから、未来の3人に向けた手紙も非常に象徴的である。
だいぶうろ覚えだが、手紙には「夢は持ち続けてもいい、変わってもいいし、忘れちゃってもいい」「今生きてることが大切」といった内容が記されていた。私は小学生の頃の夢なんか当然全く叶えられなかった部類の人間であるため、この言葉の優しさにめちゃくちゃに泣いたのだが、それはさておき大変に懐の深い手紙である。
 また、タクセンの台詞でもうひとつ。「普通に生きるってことが1番難しいのかもな」という言葉も印象深かった。
普通に生きることの難しさについてはアッチョからも言及されている。虚栄を取り去った本当の近況報告の後、アッチョは「普通に働いて普通に生きるってそんなに簡単じゃない」と言う。
 夢追い人を応援し、肯定する作品は数多くある。だがこの作品は夢追い人はもちろん、夢破れた人、破れたという程でもなく日々の中で緩やかに夢を手放した人、そして夢の事を忘れて普通に生きている人まで全てをひっくるめて肯定している。
平日の夜に見るにはちょっとあらゆる部位に刺さりすぎる作品なんですよね(平日夜のチケットしか取ってなかった人)

 


ドアを開けた先に

 アッチョが就職に成功したのか、それともまだ就職活動中なのか、明確な答えは出ていない。ショコラ横山の3rdシングル『PICK☆3』も売れたのか、そもそもリリース出来たのかすら我々には分からない。もしかしたら社長にすげなく突き返され、ポーはアーティストを辞めて地元に帰ったのかもしれない。
タマちゃんだって企画が通ったのか、上司との関係が改善されたのかわからない。それでもそれでいいのだ。大切なのはそこでは無い。
『PICK☆3』はハッピーエンドの物語だ。それ自体は終盤の3人の晴れやかな表情からも明らかである。

 では、何が『PICK⭐︎3』をハッピーエンドたらしめているのか。私個人としては、引きこもりだったアッチョが社会に出られたからハッピーエンドなのだ、とは思っていない。アッチョが『魔法プリンセスめぐめぐシャイン』を好きでいる自分を胸を張って開示出来るようになったから、この作品はハッピーエンドなのだと感じている。
本当の自分を隠して生きてきた3人が「心のショーケース 」からようやく自分を、自分の好きを外に出せたことにこそ意義があるのだ。
舞台はアッチョが「行ってきまーす!」と玄関のドアを開ける音で幕を下ろす。この音がアッチョ、タマちゃん、ポーの3人の心のショーケースを開けた音のようにも聞こえた。

 

キャストごとの所感

アッチョ/海青さん

演技が上手い
冒頭の数分間の海青さん1人の長台詞、掴みの時点で「もうこの舞台は大丈夫だ……!」というとんでもない安心感がありました
アッチョが海青さんの筋肉という魅力は捨てずに、マッチョイズム的な要素を感じさせない、むしろ積極的に弱さを吐露するようなキャラクターだったのが個人的にすごく好きです
あの高身長と体格でしっかり小学生に見えるのなんなんですかね、魔法???
あとアッチョがブチギレ〜!?みたいな場面で和やかな雰囲気から一気に緊迫感溢れる空間に変える場の支配力が途轍も無かった 見てて本当にドキドキしました
1回シリアスに振り切ったお役も拝見してみたい……
海青さんの舞台もっとください


タマちゃん/岩谷さん

演技が上手い
バーチャル内見最高すぎませんか?
ハイローでも思ってたんですが、コメディの間の取り方とかセリフの温度差の付け方が大変お上手で岩谷さんが喋る度にゲラゲラ笑ってました
「お母さんとか言うなよ〜」辺りのセリフが小学生特有イントネーション過ぎてめちゃくちゃ面白かった
アッチョと怒鳴り合うシーンのお芝居 怒りの表現がすごくリアルで好きでした
殺しても死なない岩谷さんが見られるのはPICK☆3だけ!!!(語弊)
岩谷さんの舞台もっとください


ポー/昂秀さん

演技が上手い
っていうかお歌すごくなかったですか!? ショコラ横山が星だよもう……ショコラ横山……推させて………
小学生仕草が異常に上手くて「小学校の時こういう子いたー!!!」と思いました
ハイローもETERNALも温かい所で育ったタイプではない役柄を演じてらっしゃったので、ぬくぬくぽやぽや育ったであろうポーちゃんを観られて大変Happy……
独白シーンの傷ついて不貞腐れたみたいな世を拗ねたみたいな演技がマジのマジで最高
昂秀さんの舞台もっとください


タクセン/大地さん

あまりにも先生
先生がハマり過ぎてたので前職学校の先生だったのかなと思って帰り道にWikipedia見ました(違った)
大地さんがいた事で舞台全体が締まっていたな〜と思いました
アドリブを仕掛けるのも対応するのも上手すぎるし何より面白すぎる
コメディシーンだけでなくしっとりした語りの場面も大人の哀愁と祈りの優しさが良くて良くて
タクセンがセットを片付ける場面、子供の楽しいキラキラした日々は大人の地味な努力によるものなんだよなぁ感があって好きです
タクセンの事ってアッチョもポーもタマちゃんも多分忘れてて小学校の時の担任の先生ってまあ確かに忘れちゃうよねーというリアルさと、それでも3人が再会出来たのも3人の人生がプラスの方向に転がり出すのもタクセンの存在があったからこそなんだろうなという絶妙な温度感も好き
掘り出しにくるかもわからないタイムカプセルに大人になった3人への祈りみたいな言葉を残してるの健気で涙止まらなくなる


その他

・セットの段ボールが見た目のインパクトだけでなくしっかり理由付けされていて良かった
・友達同士の脈絡なく話題が飛んでいく雑談の感じリアルだな〜
・マネージャーも上司も「普通に生きてる」人で悪役がいないの大好き
・人数が絞られている分『ETERNAL』より濃密にお芝居を浴びられて良かった

 

帰りたいな 帰りたいな 君(PICK☆3)といたあの頃へ

円盤発売本当にお願いします

*1:one cake size feathers-「Come back to the home」

君といる未来でまた会えたら —ニンジャバットマン・ザ・ショーによせて—

 
 最愛の舞台の話をしたい。

 

 このブログを開いてくれた方にひとつ質問をさせてほしい。

あなたはニンジャバットマン・ザ・ショー』という舞台を知っているだろうか?

 

タイトル前半の『ニンジャバットマン』に関しては「あー、あの神風動画制作の」という声が上がりそうだ。「南蛮人のファーマーのやつ」と付け加えれば「あれか!」と思い出す方もいるかも知れない。

 

 まずはニンジャバットマンについて軽く説明させて頂きたい。

ニンジャバットマン』とは2018年に公開されたアニメーション映画である。アメリカの大手出版社DCコミックスの誇るヒーロー・バットマンが色々あってタイムスリップしてしまう。なんとその地は日本!それも戦国時代ど真ん中!

 

この時点ですでに力技展開感が否めないのだがこれはまだ導入にすぎない。

 

 実はタイムスリップしたのはバットマンだけではなかったのだ!バットマンの宿敵・ジョーカーを筆頭に6人のヴィランが日本に集結!
更に更にバットファミリーからアルフレッドはもちろん、キャットウーマンと4人のロビンズ兄弟までも登場し、コミックでもこんなに欲張りセットみたいなそろい方する回あんまりないだろ*1くらいのまじでめちゃくちゃ豪華キャラクターが大集結する映画だ。

 

そんな面々が集まって何をするか。それはもちろんバトルである。

現代のゴッサムに帰りたいバットマンチームVS戦国時代って殺生し放題じゃん最高~~!!ずっとここに残りたいぜ!!なヴィランチームとで時空間移動装置を奪い合う。
果たしてバットマンたちはゴッサムに帰れるのか── ざっくり言うとこんな感じの話だ。

 

 ヴィラン達がヴィラン大名」を名乗って各地に城を持ち、その城が変形して巨大ロボになるトンチキ展開だったりレッドフード(しかも声帯が石田彰)がジョーカーをぶん殴りながら言い放つ南蛮人のファーマーがどこにいる!」というパワーワードだったり、あらゆる意味で面白い作品である。

Netflixで配信されているので詳細が気になる方はそちらで見てください。

ちなみにコミカライズ(日本語で読める)もあります。個人的にはコミカライズのほうがキャラクター描写が丁寧で好き。

 

 

 そんなお祭り映画『ニンジャバットマン』が2021年、実写舞台化された。それこそが『ニンジャバットマン・ザ・ショー』だ。(以下、ニンジャバショーと記載する。)

↓公演ダイジェスト動画があるので貼りました

お洒落なピアノイントロから繰り出される「忍法🎶HIP HOP🎶」という癖の強すぎるリリック、何度聞いても最高

 映画から出演メンバーを絞り、バットマンチームはバットマンキャットウーマン、レッドフード+回替わりで[ナイトウィング/レッドロビン/ロビン]からいずれか一人、ヴィランチームはジョーカーとハーレイ・クイン+映像出演のゴリラグロットという布陣である。ストーリーは概ね映画と同じ。

映画との最も大きな差異は台詞が極端に少ない点だ。クライマックスであるバットマンとジョーカーの最終決戦まではほぼ喋らない。所謂ノンバーバル舞台として作られており、タイトル通り本当に"ショー"なのだ。

 

 実は本作はバットマンの初の実写舞台作品である。そんな記念すべきプロジェクト、本国アメリカでやりそうなものなのだがなんとこの作品、日本で上演されていた。ちなみに劇場は池袋シアターミクサ。キャストさんのファンやアメコミのオタク以外で知っている人はかなり少ないと思われるのだが、去年の秋、池袋にはバットマン(公式認可済)がいた。4チームで役替わりをやっていたのでなんなら4人いた。4人のバットマン in 池袋。夢みたいな話である。

 


 では前置きはこの辺りにして具体的にニンジャバショーについて語っていきたい。

 

Q.ニンジャバショーの何が凄いの?

A.アクション

 ニンジャバショー、マジでアクションのレベルが高い。
アンサンブルの方々も含めて全員すごいのだが中でもレッドフードのアクションがとんでもなかった。
本作ではステージが1階と2階に分かれており、2階部分は2-3mの高さがあるのだが、レッドフードはその2階からなんて事ないような顔をして飛び降りてくる。
飛び降りてきたことに目を剥いているとそのままバク宙やらバク転やらなんだか名称は分からないが人間の可動域を超えてるだろレベルのとんでもないアクロバットを連発してくるのだ。多分レッドフードだけ重力が無い世界に住んでる。
 初見時はあまりの身体能力に息を呑みまくり、普通に「ひぇ……」「エッ……!?」みたいな声がめっちゃくちゃ出てしまった。
マナーが悪くて本当に申し訳ないんですけどマジで身構えていないと声が出てしまうくらいのとんでもないアクロバットなんです……見て……
言葉を尽くしても何も伝わらないと思うのでレッドフード役の方の動画を貼らせて頂きます。

↓桜井鷹さん

 

↓弥圓佐助さん

これが前述した例の飛び降りです

 お二人ともすごすぎない????

こういうのがぽんぽんある。毎公演。もちろんレッドフード以外のキャラクターもアクション盛り盛りである。贅沢すぎてチケットの価格設定がバグだと思った。

 


Q.アクションがすごいのは分かった。でも肝心の中身はどうなの?セリフがないってことは薄いんじゃないの?

A.そんなことない

 本当にそんなことはない。本作の素晴らしいところ且つ個人的な最推しポイントなのだが、ニンジャバショーにはバットマンという作品、延いてはヒーローコンテンツに必要な要素が大体揃っている。

「ヒーローは人を殺めることはできねえ でもな、オレには簡単に出来るんだよ バットマン!」

 これは本作クライマックスでジョーカーがバットマンに向けるセリフだ。本当にこのセリフに全てが詰まっている。

バットマンは不殺のヒーローだ。どんな悪党であろうと決して命を奪うことはしない。しかし、コミックでも彼の不殺というスタンスは敵のみならず時には味方や市民からも甘いという指摘を受けることがある。

本作ではそんな賛否両論ある不殺主義の尊さを、バットマン自身の不殺への葛藤を通し、改めて客席に投げかけてくる。これがめちゃくちゃに良くて見る度に泣いてた。

 

 悪党を倒すのも勿論ヒーローの役目なのだが、ヒーローには他にもやることがある。人々の救出だ。ニンジャバショーはそこのところもしっかりと描いている。

これはバットマンが燃え盛る炎の中から仲間を救出するというシーンだ。シンプルにめっっっちゃくちゃかっこいい。ちなみにサムネは『バットマン:デス・イン・ザ・ファミリー』の表紙オマージュ

かなり手遅れそうな仲間も絶対に見捨てず、あえなく命を落としてしまった者には誠意をもって弔いをする。泣くほどかっこいい。実際私は見る度に咽び泣いていた。

 

 その他のシーンでもバットマン側チームは戦闘中に倒れた仲間を絶対に舞台袖まで運んでいってくれたりする。メタ的な話をすると舞台上での死者の処理なんて大体は倒れさせたまま暗転まで放置だろう。それをこの舞台ではヒーロー達が送り届けてくれるのだ。ヒーローコンテンツとしてあまりにも正しすぎる。咽び泣きました。

 

 ヒーロー要素もさることながらバットマンという作品の大事なポイントだと個人的に感じているなんだかんだバットマンって一人じゃないし仲間めっちゃいてだから強いんだよね、も作中テーマとして取り扱ってくれている。80分で盛り沢山すぎる。一本満足にも程があるだろ。

他にも演者さんのキャラクター理解が深かったり、キャラクター同士の関係性の表現*2だったり、役替わりによるキャラクター解釈の違いだったり色々旨みが止まらないのだがそこまで言及すると卒論の文字数になるため割愛します。

 

Q.このブログで言いたいことって結局なんなの

A.ニンジャバットマン・ザ・ショーを見てください

 本作は現時点で円盤化されていない舞台である。しかし映像配信は存在している。その期限は2022年12月20日まで。つまり2022年12月20日以降は一切の視聴手段が無くなる。

 

端的に言います、まだ間に合うので配信を見てください!


ひかりTVのエントリープラン(月額350円)で役替わり4チームの千秋楽映像が見れます。ちなみにひかりTVは初月無料です。

ひかりTV - 見るワクワクを、ぞくぞくと。
コミックのバットマン関連キャラクターが好きな方、映画版が好きな方、カートゥーンで見ていた方、バットマンなんも知らんけどちょっと気になるなと思った方、ぜひ……!

 

お行儀が悪いことは承知でTwitterバズり構文みたいなフックも設置しておきます。

・レッドフードの長すぎる虚無僧笠←あります*3
・「南蛮人のファーマー」←あります*4
・城変形バトル←あります
バットマンとジョーカーのエモい関係性←あります*5

・バットファミリーの絆←あります
・露天風呂でゴリラグロットとラップバトルをするバットマン←あります
・教育番組の体操のお兄さんみたいなナイトウィング←あります
バットモービル←あります
・バットカイト←あります
・映画『JOKER』の階段ダンス←あります*6

 

露天風呂でゴリラグロットとラップバトルをするバットマンに関しては本家映画にもコミックにも存在してないシーンなのでマジのガチでここでしか見れないコンテンツです。
みんな見たくない???バットマンのラップバトル。これを逃したら死ぬまで見れないと言っても過言では無い…
1公演80分で気軽に見れるのでどうか………どうかお願いします……


最後に.

 2021年の秋は気の滅入る報道が多かった。当時の私はそう言った話題のダメージをモロに受けてしまって、なんで現実世界にヴィランがいてヒーローがいないんだろう。どうしてバットマンがいないんだろう。と、バカみたいなことを心の底から考えて落ち込んでいた。
そんな時にニンジャバショーを観た。
華麗なアクションで敵を蹴散らすバットマン。どんな困難にあっても絶対に仲間を見捨てないバットマン。例えどれだけ悪人であっても命を尊重するバットマン
ヒーローは圧倒的な質量と存在感、そしてえげつないくらいの説得力を伴って私の前に現れた。
バットマン、いるじゃん。
嘘偽りなくそう思えて涙が止まらなくなった。
2021年11月、シアターミクサには間違いなくヒーローがいた。
私は死ぬまでこの公演のことを忘れない。老人ホームでニンジャバショーごっこ絶対する。

 

 

※ この記事のタイトルである「君といる未来でまた会えたら」はニンジャバショー終盤、バットマン達がゴッサムへと帰る時に流れる曲「HEROES」の歌詞の一節だ。
再配信、円盤化、再演、第二弾、形は問わない。どうか12月20日以降もニンジャバショーと出会えるように、という祈りを込めて引用させて頂きました。名曲なのでぜひ配信で聞いてみてください。

 

*1:本当にこんなに揃ってる回はレア

*2:闇チーム千秋楽のバッツとジョーカー/バッツとナイトウィング/バッツとジェイソンめっっちゃ良かったので該当関係性が好きな方ぜひ......!

*3:桜井さんレッドフードだと笠被ったままアクションしてくれたりもする

*4:セリフほぼないのに何故か採用されていて初見時に吹いた

*5:「エンドロール隣で頼むよ」「お前ありきだし」なジョーカー→バットマン、最高すぎるのでお願いだから見て

*6:確かこれは夜チームのなだぎ武さんジョーカーだけだった気がする

ETERNAL2 感想


「ETERNALII 荒野に燃ゆる正義」を観たので覚え書き

ネタバレしかないです

※主にジーン定点/コニーとガッファーも気になる、みたいな見方をしていたので結構偏りがあります
※RAMPAGEさんの現場に初めてお邪魔したのであらゆる事象への解像度が低いです

 

いや〜〜〜〜〜〜ガッファーめちゃくちゃ良かったですね…………(第一声)

 

1作目は王道展開だったのもあって個人的にはそこまで脚本が刺さらなかったんですが、今作は後半の追い上げがすごかったです

ニクラス軍のバックボーン辺りから好きなテーマ(正義の相対性)に触れていたのとガッファーのキャラクター造形が天才で……

 

以下 役ごとに感じたことをつらつら書いています
順番はプログラムの掲載順

 

レンブラント

シンプルにお歌がお上手
生歌でも声量も音程も安定していてすごい〜……
RIKUさんの伸びやかで真っ直ぐな歌声がレンブラントの持つ底なしの善性や光属性感とマッチしていてレンブラントという役としての説得力を感じました

劇中でレンブラントが語る理想の国家というものは本当に苦労を知らない甘ちゃんの理想論でしかないんですよね
それでも理想を理想で終わらせないため、あらゆる立場の人を理解しようと手を伸ばし、対話を試みる、そこがレンブラントの最大の美徳で王の器たる側面だなぁと思いました 甘ちゃんの理想論こそが真の平和を作るのだ……*1

「すまない、すまない」のシーン大好きです

全てを掬い上げようとするレンブラントの姿勢は本当に美しいんですが、ファルサリアの皆さんのような救済を求めていなさそうな人と対峙した時に彼がどう対応するのかがすごく気になりました

次回作以降でその辺にも触れるのであればより作品としての深みが増しそう

 

クロエ

長谷川さん、すごくクールな雰囲気のある美形だなぁという第一印象だったんですが、クロエはその印象を覆すような血の気の多いアツい役でこのキャストにこの役をあてるのか〜という意外性がありました

物語冒頭のクロエの「オルドのことを殺したい(ほど憎んでいる)」といった内容のセリフは残虐にも思えます
ですがこのクロエの感覚こそがロッツフォート公国側の人間の中では一番"普通"で多くの人が共有している価値観なんですよね、多分
一見極端にも思える意見や価値観を、情に厚く人の良いクロエに背負わせることで観る側にストレスを抱かせないバランス感覚が上手い
マティアスに手当を申し出るシーンがクロエの変化と成長を感じられて好きです

 

ジー

前作でも散々言いましたがお芝居がすごく好きです
感情が自然に乗っていると言うか情動の流れが辿りやすいというか……

上手く言語化できないんですが、役として感情を咀嚼し、その咀嚼した過程も含めて客席に伝わるように表現するのがお上手だなと勝手に思っています
今作ではルークに掴みかかるシーンとコニーにネズミちゃんを託されるシーンが特に印象深かったです 表情がはちゃめちゃに良い
襟にネズミ入れてもそもそしてるところ、大変にキュートでした
「どんな国にしたいのか」談義をしている時のレンブラントに向ける呆れの混ざったような所詮綺麗事だろ、とでも言いたげな表情も細かくて良かった…… 「コイツはぜってぇに殺させねェ!」のギラついた目も好き キリがないのでこの辺でやめます
重心低めな殺陣もかっこよくて好きです
序盤は上の立場の人に考えることを丸投げしていたジーンが当事者意識を持ち、自分の頭で考えるようになったり、クロエと同じく彼も劇中での大きな成長を感じさせる役だったなぁと思いました

 

キャメロン

前作に引き続きコメディ担当っぽい部分はありつつもその実すごく実直な人
オルドに部下を殺された彼が最も強い恨みを向けるのはオルドではなく自分の力不足なんですよね
レンブラント程では無いのですがキャメロンもレンブラントと同様に甘さと紙一重の優しさを感じさせるなぁと思います
終盤、マティアスとの「手を握ると何か変わると思ったんです 握り返されたことにほっとしました、温かいのにも」「当たり前だろ、生きてんだから」のやりとりがこの作品のテーマ!!といった感じで好きです
人間もオルドもミックスルーツも等しく同じ命で家族や仲間がいて信仰があって……という結論に至れたんだなぁと
キャメロンの持ち味でもある飾らない言葉や素朴な優しさが沁みました


ルーク

レンブラント様強火担かと思いきや、意外と一番冷静に周囲を見れる人
前作の裏切りのくだりでもそうなんですが、私を切り捨てて公や大義のようなものを優先できるのかなぁという印象を受けました
そういった冷静で厳格、みたいな表層を保ちながらも、胸の内にすごく熱いものを秘めているように見えてかなり好きな役でした
殺意高めな殺陣もツボです
仲間と話している時にチラッと見える微笑みがかわいくて好きです

キレッキレでエネルギッシュなダンスも素敵でした

 

リーフェン

滲み出る気品がすごい
お顔立ちがロイヤルな上に、王族らしい余裕のあるゆったりした立ち居振る舞いが効いていてずっと優美でした 殺陣にも余裕がある
レンブラントの足りない視座を補い導くという役でもあり、すごく兄らしさが出ていたなぁと思いました

 

ニクラス

お芝居が上手い
MA55IVEの曲を聞いた時も思ったんですが、山本さん、声がめちゃくちゃ良いですね……
声を張るセリフでも発声がすごく安定していたり、立ち姿も良くて見ていてすごく安心感がありました
演出の話になりますが「Moon and Back」の「大切なものを踏み躙られないように」の歌詞でニクラス部隊にスポット当たるのがめちゃくちゃに好きです 2回目を観た時にいい意味でこれはズルいな〜と思いました

自らをオルドと自認して誇りを持とうとする気高さと物悲しさが良い、、 マティアスパートだけど「固く結べ誇りのchain」って歌詞が良すぎる
「すまない」って言いながら抱きしめるレンブラントのことを振り解かないニクラスで情緒が終わった


コニー

殺陣が上手すぎませんか????
メインキャストの中でコニーだけ実質素手(言い過ぎ)みたいな装備だったのに頼りなさを一切感じさせない動きが凄かったです
動きそのもののダイナミックさがとんでもなく、ただ高身長だから、だけではない圧倒的な存在感と華がありました
口を開くと一転、気弱で心優しく、ぽしょぽしょ喋るギャップも魅力的でかなり好きなキャラクターでした
ジーンにネズミちゃんを託したりと、敵か味方かで物事を考えるより、自分の判断基準を優先出来る芯を持っているところも良かったです
彼の存在が誓約団と二クラス部隊の架け橋になっている面もあるのかなぁと思いました

MVなどを見ていて武知さんのダンスはすごくパワフルな印象が強かったのですが、劇中では感情の乗ったしっとりしたジャズダンスをされていて、それがまたはちゃめちゃにお上手でだいぶオペラ盗まれました
ニクラスとのコンビがかなり刺さっているので次回作も楽しみです

 

オズヴァルト

お芝居お上手だな〜と思いながら見ていたので演技初挑戦だったことを知ってめちゃくちゃビックリしました
セリフを言っている時も良いお芝居だったんですが、殺陣などのセリフの無い場面であっても表情の作り込みが繊細で素敵でした
大斧の殺陣も大迫力ですごかった

 

マティアス

アナウンサー体験を視聴した時にも思ったんですが、声での表現がすごくお上手……

多彩な声色を場面によって使い分けることでセリフに厚みが生まれていて良かったです

何となくマティアスは一番掴みどころの無いキャラクターだなぁと感じていたのでラストでそういうこと?!?!?!?となりました
目がすっっっっごかったですね……
前述した通りキャメロンとのやり取りがすごく好きなので裏切られた!!!!!というショックがだいぶ大きいです
言われてみれば「(イムランとガッファーを)クビには出来ねぇだろ」とひっそり庇う内通者仕草(?)してたな……
次回作での活躍が早く観たい

 

ガッファー

一番の刺さり役でした
セリフが多くない、且つ「感情を表に出さない」と明記されている役での表現ってなかなか難しそうに思えたのですが、表情が大きく動かないからこそ僅かな変化が尋常じゃなく映える、という強みの活かし方がすごかったです
「命を奪えば奪うほど神に近付く」で片頬を吊り上げて薄く笑うのがま〜〜〜良くて良くて………
ひたむきに神を信じる純粋さとそれゆえの狂気との狭間にいるという凄みや怖さを感じました
あとは「花を供えると天国へ行けると聞いた」の時のつるっとした無垢な表情や訥々とした語り口もほんっっとに良かったです 緩急の付け方が良すぎる 語彙がない為に良いしか言えないオタク

脚本の話をすると、ガッファーの残虐性や狂気を表しているように思えた花が、実は実は相手への敬意、もっと言ってしまえば思いやりによるものだった、というオチが非常に象徴的だと感じました
話し合わなければ人は互いに互いを理解出来ない、とか偏見と誤解による不理解が争いを生む、みたいなやつです

殺陣も細身の日本刀なのに一撃一撃にしっかり重さがあって太刀筋も綺麗でした
抜刀殺陣好きだ〜……

 


イムラン

シンプルにお芝居が上手い
立ち姿から殺陣から舞台上にいる時に常に100%役として存在していて隙がない
神を呼びながら旅立つイムランとそんな彼を「聖なる月の加護のあらんことを」と自身の信仰で送り出すレンブラントのシーン、好きです
次回作恐らく出演されないんだろうな〜……悲しい……
イムランとガッファーとマティアスのファルサリアスピンオフ前日譚が欲しい……設定だけでもいいので……


ライブパート

ライブに行くという行為が高校生以来且つ歌い手と地下アイドルの現場にしか行ったことが無いのでここからはかんっっぜんに未知の領域でした
演出がもう知らない世界 レーザー?ですかね、なんかビカビカしててすごかったです

「Hands  up!」って煽りで客席が本当にハンズアップする文化が新鮮でした
RIKUさんのソロ歌唱にしてもパフォーマーの皆さんのソロパートにしてもあの広いステージを1人で埋められる方が集まってグループで活動してるのすごいなぁ〜………
MA55IVEの5人のパフォーマンスがあったり、その曲を龍さんが作っていたり、メンバーそれぞれの得意なこと/やりたい事を伸ばそうという方針があるの素敵だなと思いました

16人全員揃ったパフォーマンスすごそう

 

余談

ガーデンシアター盆回りとかセリが多分無い?の転換大変そうすぎるな、と終始思っていた

LDHキャストの生命力が高すぎる

ラップの「傷は今も絶えず続くETERNAL」って歌詞、タイトル回収がやるせなくて良い

ジーンのパートが「底辺から這い上がって今ここに」なのキャラのバックボーン感じられて好きだ〜

「世界が崩れる前に出逢えますように」って誰が誰に当てた歌詞なんだろう

知らない界隈の現場に行くのに割と勇気が必要なタイプのオタクなんで現地に行くか結構迷いましたが、千秋楽配信での陣さんのコメントを聞いて改めて観に行って良かったな〜と思いました (もちろんパフォーマンス観た時点でも行って良かったなと思った)

次回作あったら(やるもんだと思ってる)またお邪魔したいです

CL加入したのでちまちま動画見てます、みんなかわいい

 

こっちに書き忘れた感想

 

*1:はやみねかおる『怪盗クイーンからの予告状』講談社 での夢水清志郎の発言の受け売りです

ヅカヲタがTHE RAMPAGEさんに出会った話

 

※これは最近RAMPAGEさんに出会い、沼の半径1m付近をうろうろするようになった程度のニワカとすら呼べない人間による個人的な備忘録です。
一から十まで門外漢の雑語りで構成されているため、各方面の方を不快にさせる恐れがあります。すみません。

 

 

 突然だが今更ハイアンドローに出会った。
6月11日、有明ガーデンシアターでのことだ。

 

 もうおわかりの方もいるかもしれないが、私がハイアンドローとファーストコンタクトを交わしたのは 宝塚歌劇団 宙組公演 スズホマカゼ スペシャルリサイタル「FLY WITH ME」である。

https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/flywithme/index.html

 

 「FLY WITH ME」はLDH宝塚歌劇団がコラボした演目で宙組の皆さんがLDHさんの楽曲を歌い踊る大変ハイテンションなリサイタルだ。

終演直後からロスが激しいので円盤と音源を今すぐに出して欲しい。


 宙組では今年の8月から「HiGH&LOW -THE PREQUEL-」という演目を上演する予定がある。(以下、宝塚版ハイロー、略してヅカローと称する)

https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/highandlow/index.html


ヅカローに先駆け、「FLY WITH ME」ではハイローコーナーがあった。

この時点の私のハイローに対する知識はやたら爆発する、暴力、轟洋介、作家の三浦しをん大先生がえげつないハマり方をしていた*1、程度の認識しかない。要するにミリしらである。
ガーデンシアター内に突如として響き渡る立木文彦ナレーション「宝塚を見に来たんだが!?!?!」と困惑したのも束の間、野口先生*2によるブチ上がり演出と宙組生の熱いパフォーマンスにすぐに飲みこまれた。
 このハイローコーナー、「FLY WITH ME」出演メンバーが各チームテーマ曲を歌い踊ってくれたのだが、中でもロッキー役の芹香さん*3がとんでもなかった。
本題がブレるので詳細は省くのだが、あまりのかっこよさに脳天をぶん殴られたような気分になった。

 その後も真風さん*4の半生(半生?)をミュージカル仕立てにしたコメディ調の場面などがあり怒涛の情報量に圧倒された私は、最終的に八割型記憶を失うこととなった。
終演後、友人と落ち会い、真っ先に口から出た言葉は「ロッキーやばかった」である。
記憶を失った上でも芹香さんのロッキーはヤバかった。その後もうわ言のようにロッキー……ロッキー……と言い続け、完全に心を奪われた私はヅカローの予習のためにハイローを見ようと思い立った。
野口先生の力技布教はやはりとんでもない威力であった。

 

 善は急げだ。翌日にHuluに入会し、ドラマS1から視聴を始めた。

ハイロー、面白いな???

 アニメ版ダイナミックコードを彷彿とさせるほどに回想場面が多かったりはするのだが、概ね展開のテンポも景気も良く、ストーリーやアクションがとにかく王道にアツいのだ。
質の高いアクションシーンや演者さんの熱の入ったお芝居の横でそうはならんやろ!!というトンデモ要素を平然とお出ししてくるバランスが妙にツボにハマってしまい、気付けば夢中になっていた。
やはり世間が面白いと言っているものは面白いから見た方がいいという当たり前のことを再認識する経験であった。

 

 1話30分というお手軽さもありドラマS2まで4日程で見終わった私は「村山良樹……」と呻くだけのbotと化した。
村山良樹及び彼の周りの人間関係がとんでもない勢いで刺さってしまったのである。

特に村山とコブラの関係性に好みのド真ん中を打ち抜かれた私は、フォロワーに対し「なんで今まで誰も私にハイロー勧めてくれなかったの!?」等と理不尽にキレ散らかしたりしていた。完全に情緒がおかしくなっている。ちなみにフォロワーはヅカローの上演が決まった直後に丁寧に履修順を解説してくれていた。履修を後回しにしていたのは私の怠慢でしかないため、本当に理不尽なキレである。

ドラマの鬼邪高回であるところのS1の2-3話とS2の7-8話を繰り返し視聴していたのだが、定時だけでなく全日の辻・芝マンペアのビジュアルやニコイチ感も刺さってしまい各所に悲鳴を上げ続けていた。

1週間ほどで映画もFMまで視聴を終え、ヅカローの予習は既にもう充分出来ていると言える状態にあったが、そこで止まれるような理性がもう無かったためそのままザワ0に突入した。

ザワ0で毎話村山良樹及び鬼邪高定時の皆さんのかわいさにやられ呻きまくった後、ザワを見た。ここに来てさらに花岡楓士雄という最高の男を浴びた私は再び呻いていた。
あんな男好きにならない方が無理な話である。流れるようにザワXのムビチケを買った。

 

 ハイローを全て見た私が次にとった行動はLDHの楽曲漁りであった。

ハイロー、劇中歌がめちゃくちゃに良い。

各チーム/派閥のテーマ曲が設定されていたり、LDHの方がいるチームであればMVに演者さんが出ていたりするのでハイローから使用楽曲、そこからハイロー無関係の楽曲へ、という路線はかなりシームレスなものだと思う。
私も例に漏れずAppleMusicで劇中歌を聞きまくり(特にHigher Groundを気が狂うんじゃないかと言うくらい聞いている)そのままハイローとは無関係の楽曲にまで手を出すようになった。
コブラのことが上位に好きなのでYouTubeEXILEさんと三代目さんのMVを見まくる日々を送っていたのだが、そんな中、あなたへのオススメに上がってきたのがTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEの皆さんによるザワの主題歌「SWAG&PRIDE」のMVであった。


 突然だが私にはテレビや邦画を見る習慣が幼少期から壊滅的に無い。そのため芸能人に疎い。本当に疎い。
具体的にはハイローを見るまで岩田剛典さんのお顔を見たことがなかった程度には疎い。
何が言いたいかと言うと芸能人激疎陰キャの私は、芸能人に対する知識が一般人のそれより大幅に欠如しているのだ。
大変失礼な話で申し訳ないのだが、これまでTHE RAMPAGE from EXILETRIBEというグループ名を聞いたことが無かった。
つまり、ザワを見た人の9割が知っているであろう"川村壱馬さんがRAMPAGEのボーカルであり主題歌のSWAG&PRIDEを歌っている"という基礎情報すら私は知らなかったのだ。

エッ……!!?!?楓士雄……!?!!
楓士雄の中の人、LDHの方なの!?!?!?!?

 めちゃくちゃびっくりして一度再生を止めた。
川村さんをザワ以外で拝見した事は無かったのだが、お芝居がハチャメチャにお上手だったのでてっきり俳優活動をメインにされている方だとばかり思っていたのである。

(尚、司さんに関しては特徴的な甘い声質から主題歌を歌っている人だとザワ0の段階で勘付いていた)
あんなに演技できて歌、歌まで……!?ハイスペックが過ぎる………

再生を再開した所で再び衝撃が走る。

辻芝!?!!辻芝の中の人もLDHの方だったの!?!?!

今思えばあのビジュアルの派手さはLDH側のキャストさんだと思い当たりそうなものだが、その時の私はめちゃくちゃにびっくりしていた。
(ちなみにその後このビジュならきっと中岡の演者さんもLDHだろうと思い込み、大外しをかました)

 先程もちらっと触れたが、辻芝の二人、なにせめちゃくちゃにビジュアルが好みである。
特に辻くんを演じていた鈴木さん。個性的なヘアスタイルを自分のものにしている姿が素敵で、漠然と気になっていた。

 加えて私はヅカヲタだ。要は人が歌ったり踊ったりするコンテンツが好きな部類のヲタクだ。
常日頃から「ダンス上手い方が踊っている姿をひたすら定点で10時間くらい眺めていたい」と本気で言っているくらいにはダンスを見るのが好きである。
RAMPAGEさん(に限らずLDH全体がそうかもしれない)はメンバーがボーカルとパフォーマーに分かれているらしいのだが、どうやら鈴木さんはパフォーマーのようだ。
気になっている方がバチバチに踊っているコンテンツがあることを知った私は大喜びし、ひとはしゃぎしてからYouTubeでRAMPAGEさんのコンテンツを漁りまくった。

いやRAMPAGEさんの楽曲、良………

 バチバチのカッコイイ曲がいっぱいあった。 FandangoとLightningが特に好き
そしてボーカルの三人のお歌が大変に上手い。パフォーマーの皆さんのダンスもめちゃくちゃに上手い。MVもカッコイイ。歌詞も良い。このグループすごい。

暫定一番気になる枠である鈴木さんばかり目で追ってしまったのだが、ダンスがお上手なのはもちろん、ダンス中の楽しそうな笑顔が魅力的だった。

MVだけでは飽き足らず、YouTubeに投稿されている慰安旅行やdTVで配信されているRUN!RUN!RAMPAGE!も視聴し、気付けば二週間ほどでメンバー全員のお顔とお名前を覚えていた。
CLプレミアム?の入会は目下検討中です……

 

 さらにコンテンツを漁っていく中でRAMPAGEさんの一部メンバーが舞台に出演されていたことを知った。そのメンバーには鈴木さんも入っていた。

なんせヅカヲタ、舞台は大好きである。ダメ元で視聴手段を探したところ、なんとこのタイミングで期間限定配信が行われていた。速攻で観た。

 

鈴木さん………お芝居うっっっま…………

 正直、本業が俳優さんではない方の舞台での演技ということで舐めてかかっていたのだが、めちゃくちゃに良かった。本当にすみませんでした。
そして殺陣が上手すぎる。

 以下は完全に私の主観なので読み飛ばして頂きたいのだが、鈴木さんの殺陣はただ身体能力が高いというだけの殺陣ではなくその役らしさのある、ジーンだからこそ出来る立ち回りに思えた。
貧民街出身という背景を持つキャラクターに相応しい、あまりお行儀の良くない剣の振り方や、クロエが斬られた後の動揺と怒りを感じさせる荒々しい動き等、役としての表現が本当にお上手だった。
 また、劇中の鈴木さんは蛍光グリーンのポニテ姿だったのだが(似合っていてすごい)殺陣やダンスシーンの髪の毛の扱い方・魅せ方がこれまたとんでもなく上手い。 どうでもいいけどラストで階段降りあるの宝塚かと思った

 配信視聴後に過去のインタビューを読んだのだが、「舞台の稽古が辛くて逃げ出したかった」という鈴木さんの発言に対し、咄嗟に嘘だろうと思ってしまったくらい演技も殺陣も素晴らしかった。
 もちろんラストのライブパートのパフォーマンスもバチバチにかっこよかった。白が似合う〜サングラスも似合う〜パールが似合う〜ラップもできるんですか……!?多才……
「気になる」が「好きかも」に変わった瞬間である。

 

 いや〜〜これ現地で見たかったな〜〜………と思った矢先のことだ。
「舞台ETERNAL2」の文字が目に飛び込んできた。

え!?続編やるの!?いつ!?


……………今月!?!?!

 あまりのタイミングの良さに若干の目眩を覚えつつキャストを確認する。
す、鈴木さん出る〜………!!!
さらにひっそり気になっている龍さんと武知さんも出演されるということまで知ってしまった。
そんなのもうやることはひとつしかないだろう。

チケットを取りました。

 

 RAMPAGEさんのことを何も知らないのに観に行っていいんだろうかという感情は凄まじい質量で存在している。
だが、生で演技を見たい!!オペラグラスで追っかけたい!!の欲が強くなりすぎて抗えなかった。

 

 私はドが付くレベルの陰キャである。LDHと言えば陽キャパリピお兄さんの集団という偏見しか抱いていなかったため、死ぬまでLDHと接点を持つことは無いと思っていた。人生、本当に何が起こるかわかったものではない。

 

締め方がよくわからなくなったので最後にめちゃくちゃ好きなMステの動画を貼らせてください。無断転載ではなく公式のものです。

*1:三浦しをん先生の『マナーはいらない 小説の書きかた講座』を読んでください

*2:宝塚歌劇団所属の演出家 情報量の多い高カロリーなショー作りに定評がある 「FLY WITH ME」の演出を務め、ヅカローの脚本・演出も担当している

*3:宙組の現二番手男役の芹香斗亜さん ヅカローではロッキーを演じる

*4:宙組の現男役トップスターの真風涼帆さん ヅカローではコブラを演じる